成長ホルモンが出なくなるとどうなる?

さまざまな症状

成長ホルモンが出なくなると、代謝にかかわるさまざまな症状がみられます。

コレステロールが増える

成長ホルモンは、脂肪を分解したり、また、肝臓で作られたコレステロールの取り込みを促したりすることにより、最終的には血中のコレステロールを低下させる働きがあります。成長ホルモンが出なくなると、LDL-コレステロール、総コレステロール、中性脂肪の増加がみられ、反対に、HDL-コレステロールは減少します。そのまま放置していると、動脈硬化が進む原因となります。

  • LDL-コレステロールとHDL-コレステロール
    LDLは、コレステロールを体の隅々に運ぶ働きをしますが、血栓と呼ばれる血管内のつまりを作るもとにもなり、悪玉コレステロールといわれます。体内に必要な成分ですが、多すぎると問題になります。HDL-コレステロールは、体内にある余分なコレステロールを肝臓に集める働きをし、血管内をきれいにするため、善玉コレステロールといわれています。

心筋梗塞や狭心症の危険

成長ホルモンが出なくなると、心臓の機能が徐々に低下していきます。その状態が長く続けば続くほど、心筋梗塞や狭心症の前段階ともいえる動脈硬化が進み、生命の危険(心不全)にまで及びます。

  • 動脈硬化とは?
    動脈硬化とは、動脈の壁が厚くなって弾力性が乏しくなる状態の総称です。血管内にたまった脂肪によって動脈硬化となり血液の流れが悪くなります。そして、動脈硬化が進むと血管がかたくなり、傷つきやすく、血の塊(血栓)ができます。この血栓が詰まると、急性心筋梗塞などの症状が起こります。動脈硬化は、心血管系疾患が起こる前段階の状態といえます。

糖尿病になりやすい

インスリンには、体内のブドウ糖を筋肉や肝臓などの組織に取り込ませる働きがあります。そのインスリンの働きが悪くなると、血糖が下がらなくなり、糖尿病となります。成長ホルモンが出なくなることによって内臓脂肪が増え、インスリンの働きが悪くなります。そしてさらに糖尿病をも引き起こすことになります。

内臓脂肪が増え、肥満症になる

成長ホルモンは、骨格や筋肉を発達させたり、脂肪を分解したり、体内のナトリウムバランスを維持するなど、わたしたちの体を構成する組織の維持に重要な役割を担っています。その成長ホルモンが欠乏すると、次のような症状がみられます。
● 体脂肪(とくに内臓脂肪)の増加
● 筋肉の低下
● ウエスト/ヒップ比が標準より大きくなる

  • ウエスト/ヒップ比
    ウエスト÷ヒップの値で、脂肪のつきかたがわかります。内臓脂肪が増えると、おなかまわりが大きくなり、ウエスト/ヒップ比が大きくなります。

骨が弱くなる

成長ホルモンは、子どものときの身長を伸ばす作用に限らず、大人になってからも骨の健康維持に大切な役割を果たしています。ですから、成長ホルモンが出なくなると骨が弱くなり、骨折したり骨粗鬆症になりやすくなったりします。

筋肉量が低下する、疲れやすくなる

成長ホルモンが出なくなると、筋肉量が減少していきます。それは筋力低下にもつながります。さらに心臓の機能が低下することによって、運動能力も低下し、スポーツはもちろん、日常生活にも支障があらわれます。

皮膚がカサカサ、薄い

成長ホルモンが出なくなると、皮膚は乾燥し、薄くなります。これは、皮膚の汗腺に成長ホルモンの受け皿があるためで、成長ホルモンが汗腺にたどり着かないことによって発汗量が減少し、皮膚に潤いがなくなるためです。また、発汗量が減少するということは、体の表面から熱が発散されにくくなり、体温の上昇につながります。これは運動機能が低下する原因にもなります。

  • 汗のしくみ
    汗は皮膚にある汗腺という器官から分泌されます。
    成長ホルモンは汗の調節にも関与しています。

QOLの低下

日常生活に支障―QOL(Quality of life:生活の質)の低下

成長ホルモンが出なくなると、体の機能が低下するだけでなく、精神面でもさまざまな影響があらわれます。おもな症状は以下のとおりです。

おもな症状

原因のまとめ

成長ホルモンが出なくなる原因には、次のようなことが考えられます。

  • ■ 既往歴・治療歴
    ● 頭蓋内の疾患、頭蓋部の外傷、手術や放射線治療などの治療歴がある
    ■ 子どものとき
    ● 成長ホルモン分泌不全症と診断された

症状のまとめ

成長ホルモンが出ていない人は、次のような症状があらわれます。

  • 自覚症状
    ● 疲れやすい
    ● 体力がないと思う
    ● 集中力が続かない
    ● やる気がない
    ● すぐ落ち込んでしまう
    ● 性欲が低下した

    身体所見
    ● 皮膚が乾燥している
    ● 皮膚が薄くなった
    ● 体毛が薄くなった
    ● 体脂肪が増加した
    ● ウエスト/ヒップ比が増加した
    ● 除脂肪体重*が低下した
    ● 骨量が低下した
    ● 筋力が低下した

*除脂肪体重:全体重のうち、体脂肪を除いた筋 肉や骨、内臓などの総量のこと。

国立病院機構 京都医療センター 臨床研究センター長 島津章先生

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